夏の到来とともに気になるのが“汗”。「汗をかかないほうが快適なのに」なんて思ってはいませんか。
じつは、私たちは汗をかくことで、体の機能を整え、健康を守っているのです!
汗をかかない生活を積み重ねると「低体温」になり、冷えやだるさなど不調を招きます。
健康のためには、上手に汗をかくことが不可欠。
ここでは、気持ちよく汗をかくための方法をお伝えします。


○汗は健康のバロメーター!
汗には「よい汗」と「悪い汗」があることをご存じですか?
悪い汗をかく人は、「代謝機能(食べ物が酵素の力を借りてエネルギーに変換される仕組み)」が衰え、自律神経の働きや免疫力も低下している恐れがあります。
そのため、だるい、疲れやすい、体が冷える、眠れない、風邪をひきやすいなどのトラブルを抱え込むようになり、さらに、血液がドロドロになって、脳卒中や心筋梗塞などの怖い病気を引き起こす可能性もあります。こうしたトラブルを改善するには、上手に汗をかく=「よい汗」をかくことが必要。よい汗は、体を守り健康を維持することはもちろん、皮脂を分泌させて肌をしっとり、ツヤツヤにしてくれます。
また、精神的にもすっきりリフレッシュします。


あなたの汗はよい汗?悪い汗?

次の項目に「はい」「いいえ」で答えて、チェックしてみましょう。
□じっくり汗をかくよりも、突発的にたくさん汗をかくほうですか ……はい・いいえ
□汗をなめると、塩辛い味がしますか              ……はい・いいえ 
□汗はサラサラでなく、ベタベタした感じですか         ……はい・いいえ
□小粒ではなく、大粒の汗をかきますか             ……はい・いいえ
□汗をかくとニオイ(体臭)が気になりますか          ……はい・いいえ

「はい」の数が多いほど、「悪い汗」です。このままでは、体にさまざまなトラブルを起こす危険性大。いまの生活を見直し、悪い汗を改善して、体を守る「よい汗」をかくようにしましょう。

☆悪い汗とは……だらだらと大量に流れて、塩辛く、ベタベタした感じがします。また、粒が大きくてなかなか蒸発しません。アルカリ性なので皮膚表面に細菌が繁殖しやすく、ニオイが強くなります。現代人はほとんどが悪い汗です。
☆よい汗とは……あまり塩辛くなく、水のようにサラサラしています。表面張力が小さいので、粒々になって、すぐ蒸発してしまいます。酸性なので、皮膚表面の雑菌の繁殖を抑えて、ニオイはそれほどしません。

 


○汗が体を守っている

汗の働きは「体温調節」
人間は外の気温が変化しても、体温をほぼ36〜37℃に保たなければ生きていけません。そこで、暑さや運動などで体温が上昇したときには、脳が自律神経に命令を出して発汗を促し、汗を蒸発させることによって体温を下げる仕組みになっています。
脳が発達した人間は、とくに頭にたくさんの汗腺を集中させ、熱に弱い脳を汗によって守っています。とかく嫌われがちな汗ですが、そのおかげで私たちは健康でいられるのです。


○汗をかかないとどうなるの?

エアコンの普及や運動不足などによって、必要なよい汗をかかなくなると、汗腺の働きが鈍くなります。すると、いざというときの体温調節がうまくできなくなり、かいてもほとんどが「悪い汗」となります。悪い汗は、突発的に大量に出るため、体内の大切なミネラル分を血液中に戻せず、ミネラル分を含んだまま体外に流れ出してしまいます。この結果、さまざまな体調不良や不具合が起こるようになります。

●こんなトラブルが!
熱が体にこもってだるくなる

体に熱がこもって体温が上がるのが「うつ熱」の状態で、体がだるくなります。さらに体温が上昇して40度を超え、熱射病(熱中症のひとつ)が起こると、意識がもうろうとして、ひどいときには、命にかかわることもあります(直射日光によって起こる熱射病が日射病)。

●こんなトラブルが!
汗を大量にかいて疲れやすくなる

やっと汗をかいても悪い汗なので、なかなか蒸発せず、汗のわりには体温が下がりません。さらに大量の水分を失うので、血液が濃く血行不良となり、筋肉に乳酸がたまって疲労感に襲われます。ひどくなると熱疲労(熱中症のひとつ)で、めまいや失神、吐き気などを起こすことも。また、体の水分・ミネラル分不足により、疲れ、食欲不振などの夏バテや、内蔵機能低下につながります。

 

●体のなかはSOS!
低体温になり、冷え症になる

体に熱がこもると危険なため、体温が上がりすぎないように、体は「基礎代謝(生きていく上で必要なエネルギー)」を下げて、余分な熱ができないようにします。この結果、「低体温」となり、血行が悪くなって体が冷え、また、活動に必要なエネルギーが不足して覇気がなくなったり、脳がうまく働かずに考えがまとまらなかったりします。

●体のなかはSOS!
太りやすくやせにくくなる

基礎代謝が低下するので、食べたものがエネルギーに変換されず、体脂肪となって体に蓄積され、以前と同じ量を食べても太りやすくなります。また、ミネラル分の不足によって、体についた余分の脂肪もエネルギーとして十分燃焼できず、なかなかやせない体になってしまいます。

●体のなかはSOS!
自律神経が乱れ、免疫力が低下する

低体温になると、外気温の変化に反応して、すぐに体温が上がったり下がったりして一定に保てなくなります。こうなると自律神経自体の働きが低下し、頭痛、肩こりがする、動悸や息切れがする、よく眠れないなどの症状があらわれます。また、免疫力も低下し、風邪をひくなど感染症にかかりやすくなります。

○汗ってそもそも何?

汗は、血液中の水分とミネラル分(血漿)を汗腺に取り込んだもの。
99%以上が水分で、残りは塩分、カリウム、カルシウムなどのミネラル、重炭酸イオンなどの電解質が含まれています。
このミネラル分は体に必要なもなので、汗腺には、血漿を汗としていったん取り入れた後に、ミネラル分を再び血液中に戻す働きがあります。
汗として皮膚に出るのは、水分とわずかな塩分だけです。
これが本来の「よい汗」です。


もっと汗をかいて、心も体も健康に!

○よい汗をかくには?

健康でいるためには、本来のよい汗がかけるようになることが第一です。その方法はとても簡単。
文明に頼りすぎず、自分のチカラで体温を上げて積極的に汗をかき、その汗で、上がった体温を下げること、これだけです。

1.よく歩く、よく動く
まずは体内で熱をつくり、汗を出しましょう。しっかりと歩いて、体をたくさん動かしていると、普段から汗が出にくい人も少しずつ汗をかけるようになります。激しい運動は必要ありません。ウォーキングなどの有酸素運動(酸素をたくさん取り入れる運動)で、少し汗ばむくらいが目標です。

2.お風呂に入る
入浴は汗をかくのに最適。夏はシャワーですませずに、できるだけ湯船につかって体を温め、汗を出しましょう。とくにエアコンで体が冷えすぎている人は血行を良くするためにも大切。コップ半分くらいの酢(クエン酸の多い醸造酢あるいは黒酢)を入れると、皮膚の雑菌の繁殖を抑え、体臭の予防にもなります。

3.エアコンで冷やしすぎない
体には脳と皮膚とで温度を感じるセンサーがあります。暑い戸外から冷房のきいた部屋に入ると、皮膚のセンサーが働いて一気に発汗を抑えようとしますが、じつは体の中はほてったままのうつ熱状態になるので、脳のセンサーは発汗を促そうとします。エアコンによるこの矛盾した状態に2つのセンサーは混乱し、必要な汗がかけなくなって、体温調節ができなくなります。できれば外気温との差を5℃以内に抑え、エアコンで冷やしすぎないこと。また、熱めのお茶を飲んで、内側から体を温めることも大事です。


お風呂あがりには
エアコンは厳禁、汗はすぐふき取らない

エアコンで汗を無理に抑えると、脳の温度は高いままになり、寝汗をかいてかえって体が冷えすぎ、体調を崩します。かいた汗の力で、体温を自然に下げましょう。うちわを使って、動脈が皮膚のすぐ近くを通っているワキの下や首筋をあおぐと、効率的に体温が下がります。額にも温度センサーがあるので、額も忘れずに。汗がひいてから、衣服を着ます。

クエン酸ドリンク、ショウガ湯を飲む
水分補給に、リンゴ酢や黒酢などのクエン酸ドリンクを飲むと、疲労回復効果もあります。発汗を促す作用のあるショウガ湯(すりおろしたショウガをコップに入れ、ハチミツを加えてお湯を注ぐ)もおすすめ。


COLUMN
人間の体もヒートアイランド
エアコンの普及とともに、建物の中は冷房がきいて快適に暮らせるようになりましたが、その分、エアコンの熱が外気に排出されて、都会は熱くなる一方。見渡すと、地面はアスファルトに埋めつくされて、以前のように降った雨が蒸発するときに地表の熱を奪い、外気を冷やしてくれることはなくなりました。その結果、外気温はますます上がるばかり。これって、汗をかかなく(かけなく)なって、熱を放出できない私たちの体と似ていませんか?人間も大地も、本来の姿から離れ、いまや危機に瀕しているのです。

3歳までに汗腺はできあがる!
人間の汗腺は3歳くらいまでにできあがるとされています。ですから、この時期には、暑さを体感させ、きちんと汗をかかせることが重要です。
でなければ、汗腺機能が十分に発達せず、体温調節のできない体になってしまいます。すると、ぼうっとしてやる気がなくなる反面、慢性的に苛ただってキレやすくなる危険性も大。「汗をかくとかわいそう」とエアコンに頼った子育ては、子どものためには逆効果なのです。

 

○気になるニオイを防ぎ、さわやかに過ごすコツ

1.水分をたくさんとろう
「汗をかくから、水分を控える」という人がいますが、これは間違い。水分はすべて汗になるのではなく、必要な分だけ汗として出て、余分な水分は尿として排泄されます。飲む水の量を減らしても汗は減りません。逆に水分不足は便秘の原因になり、体臭が強くなることも。
心配せずに、普段から水分をよくとって水分補給しましょう。できれば天然のミネラルが含まれたミネラル炭酸水を。汗で失いがちなミネラル不足を補い、疲労回復に役立ちます。

2.肉類を控え、大豆をとろう
肉類は糖質などに比べて約5倍も多くの熱を産出するので、たくさん食べると体温が上がり、汗が出やすくなります。また動物性のタンパク質や脂肪が多く、ニオイの原因にもなるので、肉類をなるべく控えましょう。
おすすめは、納豆や豆乳などの大豆。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと同じような働きがあり、更年期のホルモン不足を補うほか、汗腺に直接働きかけて、更年期障害による多汗を抑えます。また、大豆のレシチンは、界面活性作用で汗を小粒にし、蒸発しやすい汗に変えてくれます。


3.ニオイを防ぐ知恵
自分でつくる制汗剤

汗を抑えるには、制汗剤を使うこともひとつの方法です。ミョウバンや重曹(薬局などで市販)を使った、体に優しい昔ながらの制汗剤を、2つ紹介しましょう。

ミョウバンを使って

・水道水300ミリリットル(コップ1杯半)に、焼きミョウバン10グラム(生ミョウバンなら15グラム)を入れて溶かし(2〜3日置く)、液が透明になったら原液の出来上がり。冷蔵庫で1〜2週間保存できます。使うときは、水道水で原液を20〜50倍に薄め、ガーゼに浸してワキの下などをふいたり、直接肌にスプレーしたりします。消臭効果もあり、原液にレモン1切れ(1/5個程度)を絞って入れたり、水道水の代わりに緑茶を使ったりすると、消臭効果もよりアップします。

重曹で

・重曹制汗剤はすぐに作れるので、急ぐときは便利。重曹大さじ1杯をコップ1杯の水道水に入れて溶かせば(すぐに溶ける)出来上がり。スプレー容器に入れて、直接肌に吹きつけます。ワキの汗を抑えたいときは、重曹の粉を軽く塗布しても効果があります。

:肌の弱いかたは、かぶれることがありますので、十分注意してください。


○汗をとめたい!
こんなときの緊急対策は

外出先で急に汗が出てきてこまった……。そんなときには次の方法を試してみましょう。ぐんと発汗が抑えられます。

●皮膚をつねる
私たちの体には、圧迫されると、その部分の発汗量が減少する仕組みがあります。顔の汗を抑えたいときは、両手の指で、両側のバストの5?ほどうえをの皮膚を少し強めにつねる(または押す)と、胸から顔までの発汗が一時的に減少します。下半身の汗をとめたいときは、左右の腰のあたりをつねります。なお、抑えられた汗の分は、他の場所に回って排出されるため、全体の発汗量は変わりません。

●冷たいものはゆっくり飲む
冷たいものを飲むときは、すぐに飲み込まずに、口の中で冷たさを実感してください。口の中には温度を感じる冷温受容器があるので、ここで冷たさを感じると、体温が下がりやすくなります。

●冷たいタオルで、首のつけ根などをふく
手首、首のつけ根、ワキの下などを、冷たいタオルや冷えたジュースの缶などを押し当て冷やします。これらの場所には、皮膚の表面近くを動脈が走っているため、効率的に体温が下がり、発汗が抑えられます。乾いたタオルよりも水で濡らしたタオルで汗をふくと、イヤな汗のベタベタがとれて、さっぱりします。

 

○汗と上手につきあうためのグッズ

●ハンカチ
汗をよく吸うガーゼ地のものが最適。ひとつだけでなく、厚手のタオル地のものや大判のものなど、いくつか持ち歩くとよいでしょう。

●肌着
汗をすばやく吸い取り、発散させる素材に、防臭効果もほどこされた肌着が人気です。汗が気になるワキの下に汗とり機能のついたものも便利。

●汗対策スプレー
衣類にスプレーする新しいタイプの消臭剤や、汗に反応して寄ってくる虫をガードするさらさらミスト。

●扇子
汗を抑えるのに意外に役立つのがこれ。折りたためる扇子やうちわなど、涼しげな模様のものをいくつか取りそろえておきましょう。

大気汚染の影響で都会人は汗臭い?
東京医科大学の研究によると、通常なら尿にはほとんど排出されない重炭酸イオンが、都会暮らしの人に増えてきているそうです。これは、自動車の排気ガスなどで二酸化炭素濃度が高くなっていることが原因だとか。汗の中の重炭酸イオン量も同じく増加していて、皮膚表面がアルカリ性に傾いて雑菌が繁殖し、汗くさくなると考えられています。都会の人は空気の澄んだ田舎暮らしの人より、汗対策を念入りにする必要がありそうですね。

 

○悪い汗をよい汗に変える岩盤浴

よい汗をかくのに、汗の専門家である五味先生もおすすめなのが最近注目の「岩盤浴」。
岩盤浴とは、お湯を使わず、温められた天然の鉱石(ブラックシリカや天照石など)の上に、バスタオルなどを敷いて横たわり、発汗を促す新しい入浴法。五味先生によると、「鉱石が出す遠赤外線が体の深部までじっくり温めるので、脳がゆっくり発汗命令を出し、同時に出るマイナスイオン効果も重なって、めざすサラサラ汗がかけるんです」とのこと。
皮脂腺も刺激され皮脂を分泌して美肌づくりができるほか、カドミウムなどの有害物質や老廃物を排出する作用も期待できるとか。
岩盤浴室は、一般的に室温40℃前後、湿度65%ほどで、息苦しくなく、快適。



pumpkin 2005年7月号


多汗症についての相談(回答内容別)
多汗症についての相談(質問内容別)