汗の種類は2種類

 一年で最も気温が高い8月は、汗をかく機会が多く、汗のべとつきやにおいが気になる時期。ところで汗には、2つの種類があることをご存知ですか? 皮膚には汗が出る汗腺が2種類あり、エクリン腺から分泌から分泌される汗とアポクリン腺から分泌される汗があるのです。
 エクリン腺は、唇と、爪でおおわれている皮膚以外、ほぼ全身の皮膚にあります。ここから分泌されるのは「体温調節」のための汗。人間は、常に37℃前後の体温を保ち続ける恒温動物なので、体温が上がりすぎても、下がりすぎても体にダメージを与えてしまいます。そのため、汗をかいて皮膚から汗を蒸発させることで、皮膚の熱を奪い、体温を下げているのです。
 辛いものを食べたとき、ひたいや鼻の頭にかく汗も、エクリン腺から分泌されるもの。ちなみに、緊張したり、驚いたときに手のひらや足の裏、わきの下にかく汗も、エクリン腺から出るものです。
 一方、アポクリン腺は、わきの下の皮膚の毛根部に多くある汗腺で、まれに耳の中やおへそのまわりなどにもあります。こちらは、もともと異性をひきつけるフェロモンのような役割を担っており、いわゆる"体臭"のもととなる汗を分泌します。アポクリン腺の数は、人種や個人によっても差がありますが、食生活の欧米化などにより、日本人の10代、20代のアポクリン腺は20年前に比べて増加、においも強くなっています。においが心配な場合は専門医に相談し、最適な治療法のアドバイスを受けましょう。

汗が出るメカニズム

 夏の暑い日、「汗をかいた」と感じるときの汗は通常、エクリン腺から分泌されています。ではここで、そのメカニズムについて簡単に説明しておきましょう。
 気温が上がり、皮膚の温度が高くなると、皮膚の温度センサーが「温度が上がった」という情報を、皮膚の知覚神経を通じて脳に伝えます。その情報が、体温の調整をつかさどる脳の視床下部に到達すると、「汗を出せ」という指令を、エクリン腺に発します。
 エクリン腺は、皮膚の下に糸を巻きつけたような形の分泌管があり、皮膚表面に向かって汗を出す通路があります。脳から汗を出す指令を受けると、エクリン腺の細胞がはたらき、周囲の毛細血管から血漿(血球成分を除いた血液の液体部分)をくみ取り始めます。ただし、血漿にはナトリウムなど体に必要な成分が多く含まれているため、そのまま体の外に出すわけにはいきません。そこで、汗を出す通路の出口付近にある導管と呼ばれる場所で、体に必要な成分を血管に戻す"再吸収"が行われ、残りの水分を体の外に汗として出しているのです。

"よい汗"と"悪い汗"

 エクリン腺から出る汗には、"よい汗"と"悪い汗"があります。
 よい汗とは、小粒で水のようにサラサラ。皮膚の上で蒸発しやすく、効率よく体温調節ができるため、長く汗をかき続けることがありません。スポーツ選手など、汗をかく機会の多い人ほど、このタイプの汗が出ているようです。
 一方、悪い汗の方は、大粒で濃度が濃くベトベト。皮膚からなかなか蒸発しないため体温調節がしにくく、いつまでもダラダラと流れ続けてしまいます。また、汗自体がにおうのも悪い汗の特徴です。
 悪い汗をかく人は、ふだん、汗をかく機会が少ない場合がほとんど。汗腺の機能の低下が原因と考えられます。汗腺の機能が低下すると、前述の再吸収がきちんと行われないため、汗の中に血漿の成分が多く含まれたままになってしまい、汗のべとつきやにおいの原因となってしまうのです。


よい汗と悪い汗の違い

よい汗 ・汗をかいてもサラッとしている
    ・汗の粒子が細かい
    ・におわない
    ・目に入っても痛くなく、味がしない
    ・すっきりと爽快になる

悪い汗 ・汗がベトベトする
    ・汗の粒が大きくダラダラ流れる   
    ・汗くさい
    ・しょっぱい、すっぱい
    ・汗をかくと疲労感がある

よい汗は……
○肌の上ですぐに乾く
○限りなく水に近い
○速やかに、必要な量が出て体温を調節する

参考資料/『汗をかけない人間は爬虫類化する』(祥伝社)

よい汗をかくための方法

 サラサラのよい汗をかくためには、“汗腺トレーニング”が有効です。まず、熱めのお湯に、ひじから先とひざから下だけをつける手足高温浴を行いましょう。脳から遠い足や腕の汗腺の機能は低下しやすいので、その部分の汗腺を積極的にトレーニングすることで汗腺の機能を高めることができます。
 次に、ぬるめのお湯につかる微温浴で、手足高温浴で高まった交感神経を安定させてください。このとき、発汗作用のある酢をコップ半分ほど加えると汗腺機能の回復を助けてくれます。高齢者や血圧の高い人は手足高温浴は避け、微温浴から始めてくださいね。
 汗腺トレーニングの後はタオルで水分を拭き、ゆっくり汗を蒸発させてゆるやかに体温を下げましょう。水やジュースで割ったりんご酢や黒酢のドリンク、またすり下ろしたしょうがにはちみつを加えてお湯で溶くしょうがドリンクなどで水分補給をすると汗腺の機能が高まり、汗腺トレーニングの効果がさらにアップします。これを3週間ほど続けると、よい汗をかくことができるようになりますよ。
 よい汗は本来、無臭ですが、汗をかいたあと、しばらくすると汗くささを感じることがあります。汗のにおいは、皮膚表面の皮脂やあか、ほこり、ふけなどが汗と混じることで細菌が増殖し、におい物質が発生すると考えられています。
 汗のにおいが気になる場合は、外出前に制汗剤を利用すると効果的。制汗剤はスプレー、ロールオンタイプ、クリームなどどれでもよいのですが、肌につけたあと、薬剤を乾燥させてから洋服を着るとにおいをしっかり抑えることができます。汗をかいたあとは、早めに拭き取ることも大切。乾いたハンカチよりかたく絞った濡れタオルのほうが防臭効果が高いので、外出時には濡れティッシュや市販のパウダーシートを携帯するのがおすすめです。汗のにおいは発汗後、1時間ほどで発生するので、その間にケアすることを心がけて。今年の夏は、汗腺トレーニングと上手なにおい対策で、快適に過ごしましょう。

 

よい汗をかくための汗腺トレーニング

サラサラの汗をかくためには、手足の汗腺を活性化するトレーニングが効果的。①〜③の順に行い、3週間ほど続けましょう。

①手足高温浴

ひざ下とひじから先を10〜15分間、43〜44℃の熱めのお湯につけましょう

②微温浴

36℃になるまで水を足し、コップ半分の酢※を加えて、10〜15分温まります

※酢は入浴時に入れることで汗腺の回復をサポートする作用がありますが、肌の弱い人や傷のある場合は避けてください。

③汗の乾燥

りんご酢やしょうがドリンクなどを飲みながら、10〜15分ほどゆっくり休んでください

参考資料/『新・もう汗で悩まない』(ハート出版)

 


HEALTH 2010年8月号


多汗症についての相談(回答内容別)
多汗症についての相談(質問内容別)