汗には悪い汗といい汗があるんです

「人は汗が蒸発するときの気化熱で熱を放出して体温調節をしています。ですから、夏になれば汗をかくのはあたりまえ。いい汗なら不快ではないし、意識することすらないくらいですよ」
 と五味さん。いい汗は無味無臭で、水に限りなく近く、サラサラしていて小粒。皮膚表面で蒸発しやすく、効率的に体温調節できる。一方、悪い汗はしょっぱくて、ネバネバしていて大粒。蒸発しにくいため体温調節効果が低く、ただ流れるだけの"ムダ汗"になる。
「いい汗と悪い汗の明暗を分けるのは汗腺。汗腺は人間だけがもっていて、進化の過程で脳を熱から守るために、最後につくられた器官です。そのため発展途上にあり、使わないとすぐに退化してしまうんです」
 冷房の普及や交通機関の発達による運動不足などにより、汗をかく機会が激減。その結果、休眠状態の汗腺が増え、汗をうまくかけない現代人が急増した。汗をうまくかけないと、体は自衛手段としてなるべく熱が出ないように代謝を抑制。体温が低くなり、冷え性に陥ってしまう。
「冷え性の人は、暑くなってもあまり汗をかきませんが、ある程度の暑さになると、突然、大汗をかき出します。ベトベトした悪い汗で、体に必要なミネラルも出てしまうので、慢性疲労や熱中症の原因にもなります」
 さらに加齢によって活動する汗腺の数が減ってくると、偏った汗のかき方になってくる。
「汗腺は下半身から働きが悪くなるため、代償的に上半身の汗が多くなります。更年期に首や顔に集中して汗をかくのはそのため。また、女性ホルモンが低下して男性ホルモンが優位になることで多汗になり、ホットフラッシュを加速させます」
 いい汗をかくには積極的に汗腺を鍛えるトレーニングを行うといい。といっても入浴法を少し工夫するだけでOK。まずは、43〜44℃の熱めのお湯を少なめに張った浴槽に四つんばいになり、両手の肘から先と膝から下だけをつける手足高温浴を10〜15分。その後、ぬるめのお湯を足して10〜15分半身浴。
「汗腺は未完成の器官のため退化しやすい反面、訓練すると短期間で機能を回復しやすいのです。運動不足の人でも、3週間続けると、休眠している汗腺の30%が目覚めます」

脇汗は精神的な緊張からくるものです
 
 夏の不快な汗といえば脇汗だが、これは体温を調節する汗とは別もの。
「脇汗は精神性発汗。額や手のひら、足の裏にかく汗もそう。ストレス社会に生きる現代人にとても多い汗です」
 精神性発汗は、まわりの人を気遣って緊張するがゆえの汗。気にすれば気にするほどかいてしまう。
「ですから一番の対処法は開き直ること。自分は人のために汗がかける。いい人なんだってね。応急処置としては、汗をかきたくない部分を圧迫することで、汗のコントロールが可能です」
 夏になると寝汗をかいて困るという声も高いが、寝汗にも善し悪しがある。
「睡眠は、毎晩自分の体温を下げてプチ冬眠しているようなもの。寝入りばなに生理的なよい汗をかくことで、脳が落ち着き熟睡できるのです。ところが、寝る時に脳の温度が上がっていると、たくさん汗をかかないと平熱に戻れず、濃度の高い悪い汗をかきます」
 その原因となっているのが冷房。お風呂に入ったあと、ほてった体をさまそうと、すぐに冷房の部屋に入ってしまいがちだが、これが悪い汗の元凶に。
「冷房で皮膚の温度が急激に冷やされると、皮膚のセンサーが汗を止めるように脳に指令を出します。しかし、体の深部温度は高いままなので、眠っている間に大汗をかくのです。風呂上がりは、タオルで軽く水気をふき取って、自然に汗が引くのを待ちましょう」
 寝ている間中、漏れるようにかく汗は、体力が弱っている時にかきやすい。結核などの病気が隠れていることがあるので、続くようなら内科に相談を。

脇汗や顔汗は圧迫で抑制
脇汗はぎゅっと脇を閉めるといい。顔汗は胸の上の肋骨を両手で強く押す。一時的に汗が引くことでホッとして汗が減少する。

入浴後のうちわが寝汗を防ぐ
お風呂から上がったら、うちわでクールダウンし、汗を十分に蒸発させて脳の温度を下げて寝ると、悪い寝汗をかかず熟睡できる。



マリソン 2013年8月号 「大人の保健室」 より

多汗症についての相談(回答内容別)
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