どうすれば安全安心:じめじめ暑い夏の乗り切り方 汗腺鍛えてサラサラ汗に
毎日新聞 2014年06月12日 東京夕刊



 ◇まず手足を熱い湯に/ぬるめの湯で半身浴/入浴後はゆっくり乾燥

 じめじめと暑い季節がやってきた。噴き出す汗をぬぐいながら、満員電車に揺られる人も多いのではないか。薬局の店頭に対策商品が並ぶほど不快に感じることが多い汗だが、人間の体調維持には欠かせない機能だそう。では、どうやって汗と付き合っていけば良いのか。専門家に話を聞いた。【田村彰子】

 「夏は汗をかきたくないと思う人は多いでしょう。でも、汗をかきやすい体になればかえって汗の量を減らせるのです」。汗博士として知られる五味クリニック院長の五味常明さんはそう語る。

 人は汗をかき、汗が蒸発するときの気化熱で体温を下げている。汗を分泌する汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺があるが、アポクリン腺の多い脇やへその周りを除き、大部分の皮膚の表面にはエクリン腺がある。

 体温が高まると、蒸発によって熱を下げるため主に血漿(けっしょう)が汗腺の中に移動する。エクリン腺がきちんと機能していれば、体外へ出るまでに水以外の成分が再吸収され、99%が水の蒸発しやすいサラサラ汗が出る。しかし汗腺が衰えると再吸収されにくくなり、ナトリウムや乳酸、アンモニアなども含まれるネバネバした濃い汗が出てしまう。ネバネバ汗は臭いのもととなりやすい上に蒸発しにくく体温の調整にも役立たない。そのため体は体温を下げようとして、どんどん汗をかく悪循環が生まれる。逆にサラサラ汗だと、五味さんが言うように汗の量を減らせるというわけだ。さらにネバネバ汗の場合、再吸収されなかったミネラル分も体外に出してしまうので夏バテもしやすくなる。


 「汗腺のうち有効な汗をかけるものを『能動汗腺』といい、およその数が子供の時に決まります」。早稲田大学人間科学学術院教授の永島計さんは解説する。能動汗腺数は生まれてから小児期の環境に大きな影響を受け、暑い地域で暮らした人の方が多い。「現代の日本人は、赤ちゃんの頃からエアコンで温度が一定に保たれた環境で育っているので、昔より能動汗腺数が減っている」と永島さん。

 例えば東南アジアの人たちは暑い中でも涼しい顔をしている人が多いが、決して汗をかいていないわけではない。能動汗腺が多く、体中でまんべんなく汗をかいているので体温を下げられるというのだ。「『玉のような汗』をかいている人は、能動汗腺が少ない人に多い。大人になってから増やすことは難しいが、今ある能動汗腺を鍛えることは可能です」

 汗腺を活性化させてサラサラの「良い汗」を全身でかくことが大事だが、汗腺を鍛えるにはどうしたら良いのか。五味さんが勧めるのが「汗腺トレーニング」だ。3週間ほど続けると、汗腺が鍛えられ良い汗が出るようになるという。

 まず「手足高温浴」から始める。膝から下と肘から下を42〜43度のお湯に10〜15分ほど浸す。体の大部分は外に出ているため、汗が蒸発しやすいので全身の汗腺が鍛えられる。お湯につけた際に汗をかかず皮膚が赤くなるだけの人は、汗腺がうまく働いていない「熱中症体質」なので注意が必要だ。「その場合は高温浴を中止し、運動などで長期的な改善をしていかなければなりません。エアコンも活用して、無理をしないことも大切です」と五味さん。高齢者も皮膚が温度を感じにくいため、40〜41度の低めに設定したい。

 続いて、37〜38度のぬるめのお湯にみぞおちぐらいまで入る「半身浴」を10〜15分ぐらいする。湯にコップ半分の酢を入れると、より発汗を促すので、汗腺機能を強化できるという。

 入浴後の汗の乾かし方も大事だ。エアコンで冷えた部屋で急に体を冷やすと汗腺が閉じてしまい、汗で体の熱を逃がすことができない。熱が残ったまま寝てしまうと、大量の寝汗をかいて朝には冷えてしまって夏バテの原因になる。まずはタオルで軽く水気を拭き取り、肌がしっとりする程度に保つ。そして、うちわや扇子で首筋や脇など動脈が通っている部分をあおぎ、汗を蒸発させてゆっくり体温を下げる。「固く絞ったぬれタオルで水気を取ると、臭いの対策にもなります」と五味さん。

 永島さんは「少し息が切れるぐらいの運動、速足でのウオーキングを毎日30分程度続けることでも汗腺を鍛えられます」と話す。「約1週間で少しずつ体がなじみ、1〜2カ月継続すると汗をうまくかく能力が身につきます」。夏場には汗を吸収しやすい素材の衣類を着ることも、快適で安全に運動するための知恵だという。

 しかし、どうしても気になる時もある。簡単にできる汗対策も五味さんに聞いた。

 汗をどうしても止めたい時は、冷たい水を口の中にしばらく含む▽首筋を冷やす−−がおすすめ。口の中には温度を感じる機能があり、冷たいものを口に入れることで「冷えた」と脳が感知し、汗が引いてくる。食道や胃にはこの機能はないので、口の中に冷たいものをとどめておく方が効果がある。首筋は大きな動脈があり、冷やすと脳の温度が下がりやすくなって発汗が抑えられる。冷たい血液も循環しやすくなるので、熱中症の応急処置にもいい。

 顔から流れる汗を止めたい人は、胸を圧迫すると効果的だ。「両乳首の5センチ上あたりに、上半身の汗を減らすツボがあります。舞妓(まいこ)さんも帯で圧迫することで顔の汗を防いでいるようです」と五味さん。寝汗が気になる人も、敷布団を硬いものにして背中を圧迫すると背中の汗は減るという。

 上手に汗と付き合って、快適に夏を過ごしたい。

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