「今どきの働き盛りのビジネスパーソンは、体臭への意識が高い」。こう話すのは、ワキガ・体臭・多汗治療の権威である五味クリニック院長の五味常明先生。なぜ、においを気にするようになったのか。その理由は「社会の無臭化」にあると言う。

 「においを否定するのは、人間関係が希薄な社会。人と人が濃密に関わる社会は、自分のにおいも他人のにおいも気にしません」

 無臭餃子や無臭にんにくなど、においのないことをよしとする傾向が高まり、社会からどんどんにおいが消えている。社会のにおいがなくなって気になり出すのが自分のにおいだ。以前は「男のにおい」とポジティブに捉えられた汗のにおいが、今はネガティブなにおいとして認識されるようになった。

 自分のにおいをケアできない人はビジネスマンとして失格。「かつて、肥満の人は自己コントロールができない人と言われましたが、においに関しても同じことが言えるでしょう」と五味先生は言う。職場に女性がいる場合は、特に注意が必要だ。女性は男性よりにおいの識別能力が高く、嗅覚が鋭い。男性同士では気にならないレベルのにおいであっても、女性は見逃してくれない。

●臭いのは悪い汗、良い汗は臭わない

 五味先生はにおいの素となる汗をかくメカニズムについて、次のように解説してくれた。

 脳細胞は熱に弱いため、脳が進化した人間は、脳の適温である37度に体温を保つため、汗腺機能を発達させてきた。暑くなると汗をかき、気化熱で体温を下げる。汗腺機能が正常に働いていれば、必要な分だけ汗をかき、効率良く体温を調節することができる。

 しかし、汗腺機能が低下すると上手に汗をかくことができない。脳から遠い、手足の末端から汗腺機能が衰えていくため、ほかで汗をかけない分、汗腺が多い頭部に汗が集中し、頭皮や首回りから発生するにおいの素となる。

 現在、加齢臭とは別に注目されている「ミドル脂臭」は、簡単に言うと悪い汗のにおいだという。良い汗は水のようにさらさらしていて無臭だが、悪い汗は水分以外の物質の濃度が高く、乳酸やアンモニアを多く含んでいる。皮膚の上で細菌が乳酸を分解し、発生するのがジアシチルという成分。これが「ミドル脂臭」の元である。

 「ジアセチルは少量でもかなり不快なにおいを発します。しかも、ジアセチルには他のにおいを増強させる作用があります」と五味先生は説明する。それほど気にならないレベルの皮脂のにおいであっても、ジアセチルが混じることで、強烈なにおいへと変化するというのだ。

●ミドル脂臭はケアできる

 エアコンのある生活が当たり前になったり、運動不足のせいで汗をかく機会が減ると、汗腺機能は衰える一方だ。筋肉を使うと筋肉が鍛えられるように、汗腺機能も使うことで機能を高めることができる。

 その昔、日本人は寒い冬には汗をかかずに汗腺を休め、蒸し暑くなる梅雨頃から汗をかき始め、暑さがピークを迎える夏までに自然と汗腺機能を高めてきた。自然と汗をかく機会が減った今、有酸素運動をして「良い汗」をかく機会を積極的に作らなければならないと五味先生は言う。

 疲労やストレスの蓄積、血行不良、睡眠不足も「ミドル脂臭」の発生に関係しているという。ミドル脂臭の元となるジアセチルは、汗に含まれた乳酸が分解されたとき発生する成分である。

 汗は血液を原料にしているので、血液中に乳酸が少なければ、ジアセチルの発生を抑えられる。乳酸は、TCA回路(クエン酸回路)と呼ばれるエネルギー代謝の回路で、ピルビン酸という無酸素性エネルギーを分解すると発生する。

 クエン酸から始まり、様々な有機酸に変化しながらエネルギーを生成する過程で、血液の流れが良く、酸素が十分にあれば、無酸素性のピルビン酸は発生せず、結果として乳酸も発生しないのだ。

 疲労やストレスをためないこと、血行を良くすること、有酸素系の運動をすること、酢の物や柑橘類、梅干しなど、食べ物でクエン酸を摂取すると乳酸発生防止に効果がある。

●においでわかる健康状態とにおい予防

 ミドル脂臭が出るということは、新陳代謝が悪く、汗腺機能が低下しているということらしい。

 加齢臭は30〜40代から出始め50代以降に強くなるが、加齢現象の1つなので若い頃はそれほどにおいは強くない。逆に、まだ若いのに加齢臭が強く出る場合は、高脂血症など生活習慣病の疑いがあるという。

 一方、アンモニアのにおいがする汗は疲労臭と呼ばれている。疲労やストレスがたまると、アンモニアが分解されやすくなるからだ。血液中のアンモニアは、肝臓のオルニチン回路で無毒化される。アンモニア臭い汗をかくということは、飲み過ぎや疲労、ストレス、睡眠不足などにより、肝臓が疲れていてオルニチン回路で無毒化できなかったということ。また、動物性のタンパク質を多くとると、腸内でアンモニアが合成され、それを体が吸収してしまう。

 「においは健康のバロメーター。まずは体の中でにおいを作らないように、健康的な生活をすることが一番大切です。体から出るにおいはその人の個性でもあるので、体臭を無臭化する必要はありません。過度な無臭化志向は自己否定につながります」と五味先生は指摘する。

 においが気になると自分に自信が持てなくなり、人との付き合いも消極的になる。消臭効果のあるシャンプーや洗剤、衣類などのにおいケア製品は、実際の消臭効果だけでなく、「これを使っているから大丈夫」と思える安心感ももたらしてくれるそうだ。

 においケアの根本は健康管理と清潔さの管理。汗とにおいのメカニズムを知って、人間関係にも気配りしながら夏の生活を楽しもう。

(文/辛 智恵=フリーライター) 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140725-01059102-trendy-bus_all#!bqws2j 

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