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 毎日新聞 医療プレミア
 

汗をかけないと、変温動物になる!?

 人間は、代謝により食物などの栄養を「燃焼」することで常にエネルギーをつくっているが、筋肉を動かすなどの運動に使われなかったエネルギーは熱に変わる。汗をかけないと、この熱が体の中にこもり、自律神経やホルモンの中枢が集まる脳にダメージを与えてしまう。それを避けるため、脳は代謝を落として自らを守ろうとする。しかし、低代謝になるとエネルギー不足で疲れやすかったり、低体温になったりして、さまざまな症状が引き起こされる。


 低体温とはどんな状態か。多くのケースでは、朝起きた時の体温は35度くらいなのに、外気温が上がると37度くらいまで上がる。普通の人に置き換えると37度の微熱が39度の高熱になったのと同じくらいの変化だ。2度も体温が上がると熱中症のような状態と言える。しかし低体温の人はクーラーの利いた部屋に行くと再び35度くらいに戻るという。低体温以外の人ではこうした大きな変動は起こらない。五味院長は「低体温の人は体温が一定しない。人間は恒温動物なのに、変温動物化している」と指摘する。体温が上下すると脳の温度も不安定になるため、自律神経失調症になったり、女性であれば生理周期が崩れたりする。

「いい汗」「悪い汗」とは


汗腺の再吸収の仕組み
 ところで、汗の原料は何かご存じだろうか。実は皮膚血管の中を流れる血液だ。血液には赤血球などの血球や、人間にとって大切なナトリウムやカリウムといったミネラル、臭いの元になるアンモニアなど代謝によって生じた老廃物が含まれている。これらが全て出てきてしまっては大変だ。そこで汗腺はまず、血球を除く血漿(けっしょう)をくみ取り、血漿に含まれるミネラルの多くを血管に戻し、残りを汗として体外に出している。この機能は「汗腺の再吸収」と呼ばれ、「いい汗」と「悪い汗」の分かれ道になっている。

 再吸収がしっかり機能していれば、純粋な水に近いサラサラしたいい汗をかくことができる。ところが、うまくミネラルや老廃物などを戻せないとネバネバして臭いのある悪い汗になってしまう。いい汗は小粒で蒸発しやすく、少ない量で体温を下げられる。一方、悪い汗は大粒になりやすく蒸発もしにくいため、より多くの汗、つまり血液を使わなければならず、体力を消耗しやすい。

 なぜ、こうした悪い汗が出るのだろうか。人間には300万〜400万個の汗腺があると言われている。しかし、現代のエアコン漬けや運動不足の生活習慣が汗腺の休眠を助長し、実際に働いている「能動汗腺」は普通の人で半分くらいという。働いていない汗腺はどんどん機能が低下する。能動汗腺が少ない人は、体温を下げようとするとそれぞれの汗腺が多量の汗を出さなければならないため、再吸収が間に合わず一気にどっと汗が出て悪い汗になりやすいのだ。

悪い汗が熱中症を招く

 これからの季節、注意しなければならないのは熱中症だ。熱中症は症状の軽い順に以下の4段階に分類されるが、悪い汗をかくと熱中症の各症状が出やすくなってしまうという。

・熱失神…汗を出すために皮膚の血流が多くなり、一時的に脳の血流が少なくなって酸素が脳に行き渡らず、めまいや立ちくらみが起きる症状。悪い汗をかく人は大量の汗を出さないと体温を下げられず、より多くの血液を皮膚血管に回さなければいけないので熱失神になりやすい。

・熱けいれん…悪い汗にはミネラルが多く含まれる。発汗で神経伝達に必要なミネラルが失われ、手足などの筋肉がけいれんする。

・熱疲労…悪い汗は大量の血液を使うため、脱水状態となり、頭痛や吐き気、けん怠感が出てくる。

・熱射病…脱水症状が進み体の水分が足りなくなると、血液を皮膚ではなく脳や内臓に回すため、汗が止まってしまう。そうすると体温を下げられなくなり、意識がなくなるなどの脳障害を引き起こす。

多汗症についての相談(回答内容別)
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