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汗は人間にとって欠かせないもの
汗のにおいは気になるものですが、汗は人間にとって重要な体温調節の役割を果たしています。人間が必要なエネルギーをつくり出す際に、体内で代謝が行われ、熱を発生します。熱から脳を守るために、汗腺かんせん(※)から汗を発生させ、蒸発させることで、気化熱によって体温を下げるのです。

※汗腺:皮膚にある汗を分泌する腺

人間の体の機能を最適に保てる体温は37℃弱と言われていますが、これは脳細胞を増やし、脳が最も活性化する体温が37℃だからです。筋肉や他の臓器はもう少し高めの体温の方が、機能が活性化するのですが、熱に弱い脳細胞を守ることを優先して、一定の体温を保つように進化してきました。

汗をかく仕組み「汗の一粒は血の一滴」
汗が蒸発する時の気化熱によって、体温が下がります。蒸発には水分が必要になるため、汗を供給するために、血管の中を流れる血液が原料として使われます。つまり、汗の一粒は貴重な血の一滴と言えます。汗腺は血液から血球成分を除いた血しょうから汗をつくります。血しょうの中にある体に必要なナトリウム、カリウムなどのミネラルは一旦ろ過して血液に戻し(再吸収)、残りを汗として外に出します。汗腺の機能が低下しているとミネラルの再吸収がうまくいかず、汗と共に出てしまいます。

■汗をかく仕組み

汗腺の機能が低下すると、ミネラルは汗と共に出てしまう

良い汗は蒸発しやすく、におわない
理想的な汗は「完全に再吸収ができた100%純粋な水の成分のみ」ということになります。仮に体重60kgの人が純粋な水の成分のみの汗を出す場合、体温を1℃下げるのに必要な量は100cc程度と言われています。水は表面張力が働いて小粒になりやすく蒸発しやすいため、少ない量ですぐに気化して体温を下げられます。理想に近い「良い汗」は、実際には100%とまではいきませんが、限りなく血しょう成分が薄い、水のようなサラサラとした汗です。こうした良い汗は、ほぼ無臭です。

ところが、現代はライフスタイルの変化によって、良い汗がかけなくなってきています。運動不足やエアコンの普及などで汗をかく機会が減ったことで、汗腺の再吸収機能が衰えたり退化したりし、休眠状態の汗腺が増えている人が多くなっています。再吸収がうまくできないということは、血しょう成分が汗の中に多く残る、濃度の濃い汗になります。水に近い良い汗が小粒でサラサラで、蒸発しやすいのに対して、濃度の濃い汗は大粒でベタベタしていて、なかなか蒸発しない「悪い汗」です。悪い汗にはアンモニアや乳酸などにおいの元になる成分も多く含まれています。また、雑菌も繁殖しやすく、においの原因になります。

汗腺機能の低下以外にも、更年期の多汗(ホットフラッシュ)や、緊張した時の精神性発汗(冷や汗)などは、どっと出てにおいやすい悪い汗です。
汗はじっくりかけば、再吸収された良い汗になりやすいのですが、どっと出る汗は濃くて蒸発しにくいため、より多くの血液を使って大量の汗をかかなければなりません。すると、体温を一定に保つこと自体が難しくなり、ミネラルも奪われて脱水や熱中症にもなりやすくなってしまいます。

においが強くなるのは男性だけじゃない?
良い汗は、ほぼ無臭なのですが、全身の皮膚に分布している皮脂腺が活発になると、分泌された皮脂が汗と共に細菌に分解・酸化され、においが発生します。そのため、汗をかいたまま長時間放置すると、においが発生しやすくなります。

また、加齢や生活習慣などの影響で、皮脂腺の中に脂肪酸(※)や過酸化脂質(※)が増えます。脂肪酸が過酸化脂質によって酸化されることによって、ノネナールなどのにおい物質が発生します。一般に「加齢臭」と言われる独特の脂っぽいにおいの元になるのが、このノネナールです。高齢の男性だけでなく、女性や若い人でもノネナールは出ます。特に、ストレスがたまった時など、活性酸素(※)が体内に増えると過酸化脂質が増え、脂肪酸が酸化してにおいが発生しやすくなります。

※脂肪酸:脂質に含まれる成分の一つ。脂肪は脂肪酸に分解されて、エネルギーとして使われる。
※過酸化脂質:脂質が活性酸素によって酸化されたもの。 がんや老化・動脈硬化などを引き起こす。
※活性酸素:取り込んだ酸素の一部が、多くの物質と反応しやすい不安定な状態に変化したもの。

こうした皮脂のにおいをさらに強くするのが、汗の中に含まれるアンモニアや乳酸などです。アンモニアは、動物性タンパク質が分解されたアミノ酸からでき、肉を食べ過ぎた時や激しい筋肉運動をした時、疲れた時などに、「疲労臭」と言われる、尿のにおいに近いアンモニア臭を放ちやすくなります。また、皮脂と結びついて、においをより強くします。

一方、乳酸は酸素が不足した状態でエネルギーを産生すると発生しやすくなる疲労物質です。この乳酸が皮膚の上で雑菌によって分解されると、ジアセチル(※)という成分になります。ジアセチルと皮脂が混じって発生する古い脂のような不快なにおいを、ある化粧品メーカーは皮脂分泌が盛んな中年男性に多いことから「ミドル脂臭」と名付けました。ただし、ジアセチルは女性にも発生しますから、女性にとっても人ごとではありません。忙しい生活だと疲労がたまって乳酸が出やすくなるので、ゆったりとした呼吸で酸素を十分に取り入れるように心掛けましょう。

※ジアセチル:酵母や微生物の発酵により発生する臭気成分。30〜40代の加齢臭の成分であり、人の代謝によっても発生する。頭部とその周辺から発生する。

こうしたことから、アンモニアと乳酸を汗の中に出さないようにするのが皮脂腺のにおいを抑えるコツです。

腸の中でアンモニアを作らないようにするために動物性のタンパク質を控え、腸内環境を整えましょう。積極的に摂りたい3本柱は、水溶性食物繊維(※)、オリゴ糖、乳酸菌です。また、乳酸を抑えて、疲労回復を促す効果があるクエン酸(柑橘類、黒酢、梅干しなどに多く含まれている)を摂取するのも効果的です。
また、体内に活性酸素が増えると疲労臭や加齢臭が発生しやすくなるので、活性酸素を抑える抗酸化作用のある食品(※)がお勧めです。

※水溶性食物繊維:果物や野菜に含まれるペクチン、大麦(β-グルカン)、コンブやワカメ(アルギン酸)、こんにゃく(グルコマンナン)など
※抗酸化作用のある食品:ビタミンCやEを含む野菜や果物。そのほか赤ワイン(ポリフェノール)、ニンジン(ベータカロチン)、緑茶(カテキン)、大豆(イソフラボン)、ゴマ(セサミノール)など

においが強くなる原因はさまざまで、複数の物質や発生の仕組みが複雑に影響し合っていますから、においが気になる人は何が原因なのか、生活を振り返ってみると良いでしょう。

良い汗をかくことがにおい対策にもなる?
「そもそもにおいの元になる汗をかかなければよい」と考える人もいるかもしれませんが、エアコンに頼るのは逆効果です。良い汗を少ない量でサッとかき、短時間で蒸発させることを目指しましょう。そんな良い汗をかくための方法をまとめました。

1. 汗腺を鍛えてじっくり汗をかく
20〜30分のウオーキングや有酸素運動で、汗をかく習慣をつけましょう。ダラダラとたくさん汗をかく必要はなく、じっくりとかけば十分です。休眠している汗腺を刺激して、全身の汗腺でまんべんなく汗をかけるようにすることも重要です。手足の細かい血管を温めて体の内部の温度を高める汗腺トレーニングもお勧めです(図)。

【良い汗をかくためのトレーニング入浴法】
■手足高温浴
椅子に腰かけて、42〜43℃のお湯に肘から先と膝のあたりから下を10〜15分ほどつけます。


■半身浴
37〜38℃のぬるめの湯にみぞおちまで入り、10〜15分ほどつかります。


2. エアコン依存を見直す
窓を開ける、扇風機を使う、うちわであおぐなど、エアコンの使用を減らしてみましょう。空気が循環すれば水分の蒸発が早くなります。吸湿速乾性を備えた衣類なども汗の蒸発を助けます。
なお、エアコンの利いている場所から外出する時は、5〜10分前からエアコンを切って体を暑さに慣れさせておくと、じっくりと汗をかけます。職場などエアコンが操作できない場合は、2〜3分踊り場で待機するなどの工夫をすると良いでしょう。急激な温度差があると、最初は全く汗をかかないのに、時間がが経つと大量の汗がどっと出てしまいます。

3. 汗をすぐ拭かない、拭く時は皮膚に湿り気を残す
汗をかいた後、すぐに拭くのはNGです。汗が蒸発せず体温を下げられないと脳が勘違いして、後から後から汗が出てきます。流れるような大量の汗は乾いたタオルで拭いても良いのですが、それ以外は湿ったタオルや汗拭きシートで拭いて湿気を残す方が蒸発しやすくなります。

4. 制汗剤は脇と足のみに使う
制汗剤を背中や胸まで広くスプレーしてしまうと、汗腺の穴をふさいでしまい、熱がこもって熱中症になりやすくなります。脇と足の狭い範囲だけ使いましょう。

本来、体のにおいはそれほど他人を不快にするようなものではありません。もしそれより強いにおいが出ているとしたら、体が疲れている、過食あるいは睡眠不足、運動不足など、健康が損なわれているサインの可能性があります。糖尿病や過激なダイエットによってケトン体という物質が作られ、甘酸っぱい果物が腐ったようなにおいが発生したりすることがあります。肝臓や腎臓が悪いと尿素が汗に出てアンモニア臭がしますし、口腔の病気や胃腸の病気の場合は、卵の腐ったようなにおいがします。このように、においが病気のバロメーターになることもあります。
病気ではなくても、ストレスや疲労で皮脂のにおいが強くなるのは前述のとおりです。汗が急に臭くなった、においが気になる、という場合は生活習慣を見直してみましょう。